七転び八起き

観劇記録、ハロプロのこと。たまにLGBTとお仕事の話も。

【映画】キャロル~こういうのを待っていた!美しいだけじゃないビアン映画!!~

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www.carol-movie.com

 

アカデミー賞ノミネートで話題のキャロル、見てきました。
まだよく知らない方のために、公式からあらすじを抜粋。

1952年、ニューヨーク。高級百貨店でアルバイトをするテレーズは、クリスマスで賑わう売り場で、そのひとを見た。鮮やかな金髪。艶めいた赤い唇。真っ白な肌。ゆったりした毛皮のコート。そのひともすぐにテレーズを見た。彼女の名はキャロル。このうえなく美しいそのひとにテレーズは憧れた。しかし、美しさに隠された本当の姿を知ったとき、テレーズの憧れは思いもよらなかった感情へと変わってゆく......。キャロルを演じるのはケイト・ブランシェット、テレーズを演じるのはルーニー・マーラ。いま最も輝いているふたりの女優。ふたりの視線が交わる瞬間、忘れられない愛の名作が誕生した。

本当に、よかった。何がよかったって、本当に、タイトルの通り、「こういうのを待っていた!!!」って感じ。ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが美しすぎるのはCMやポスターでも見た通り。それだけじゃなく、やっぱり内容が素晴らしかった。アカデミー賞にノミネートされるのもわかる、濃い人間ドラマ。
何がよかったのかちゃんと話そうと思うとネタバレになっちゃうので、ここから先は、ネタバレOKな方のみ読んでくださいね。

 

本当に美しく人間らしい登場人物。そして演出

ケイト・ブランシェットの演じるキャロルは裕福な奥様。いつも豪華な毛皮のコートを着て、美しく手入れされた爪をしている。旦那も子供もいるが離婚調停中。実は旦那はキャロルのことをみっともないほどに愛している様が描かれるので、おそらくは彼女から言い出した離婚なのだろう。彼女の本当に惹かれるのは、女性で、旧友のアビーともかつては深い仲だった。

一方、キャロルに惹かれる百貨店の店員、ルーニー・マーラ演じるテレーズは、華奢でミステリアスな雰囲気の若い女の子。二人は一目見つめあった時から惹かれあっていく。テレーズがキャロルが忘れていった手袋を届けたお礼に、キャロルがランチにテレーズを誘い、お互いにパートナー(男)がいることを知りつつも惹かれていく…。

本当に、どのシーンもキャロルが美しくて美しくて、ため息が出るほど。彼女は本当に微妙な表情のニュアンスを出すのが上手。
初めてテレーズをランチに誘った日の、テレーズに魅入られつつも夫と子供のことを思ってか、物憂げな表情。
テレーズを家に招待した時の、くつろいだ表情。それが旦那の急な帰宅によって一気に緊張感のあふれる表情に変化する。
テレーズを旅に誘うときの、恥じらうようなためらうような、「あ、この人ほんとに恋してるな」って表情……。本当に素敵。

映像も、キャロルの美しさ、そして二人の恋する内面を写し取った美しすぎる映像ばかり。特に私が好きなのは、真っ赤なコートを着たキャロルと、寒さで鼻をちょっと赤くした子供みたいな表情のテレーズがテラスで語り合うシーン。キャロルは愛娘と会うことを禁じられ、何かできることがあればとテレーズは心を痛める。キャロルは、娘を奪われほかにすることもないクリスマス、西へと自動車の旅をしようと思っていて、おそるおそるテレーズを誘う。テレーズは嬉しそうに、「ぜひ」という。そのシーンの最後で、キャロルも嬉しそうに微笑んで空を見上げると、雪がちらちらと舞い落ちている…。なんて美しいのか…。目に焼き付いた大好きなシーン。

当時の社会背景。未だ同性愛は「病気」「不道徳」と見られていた…。

でも、そのシーンのあとに続く二人の旅は幸せなだけじゃないんだよなあ…。
やっとベッドをともにしたと思ったら旦那の雇った探偵によって盗聴&録音されているわ…。それを知ったキャロルがテレーズに手紙を残して去るわ…。

キャロルは娘との絆を失わないためにテレーズと別れ、嫌で仕方のない「気取ったランチ」を旦那やその両親と過ごす。しかも衝撃的だったのが、ランチの中での会話。キャロルが心理療法士のところに行かされていること、そして両親が「医者」に「治療」してもらっていると思い込んでいることがわかる。

過去には、同性愛は「治療」できる「病気」だと思われていたんだな、と痛みをもってこのシーンを見た。でも、キャロルは本当に強い。そういうことを言ってくる旦那の両親にも、「医者じゃありません。心理療法士です」って何度も言い直すんだもの。すごい。私だったらきっと、何も言えない。

自分を偽る苦しさを独白するシーン

そして場面は、娘の親権について双方の弁護士同席のもと交渉しあうシーンへ。
本当に感動的だった。弁護士の言葉をさえぎってキャロルは主張する。
「自分を偽るなら私の存在意義がない。娘の親権は渡す。でも定期的に会うことだけは譲れない」と。ほとんど泣きながら、でもきっぱり言うのだ。

この、同性愛が「不道徳」と言われ「病気」と思い込む人も多い時代に、娘との関係を引き裂かれる痛みも超えて、「自分らしくある」ことを選んだ、キャロルの言葉。心が震えた。ほんとうに、そうだ。自分の感情、心のありかた、誰と生きていきたいかということ。それを押し込めて世間のいう「道徳的に」生きることは、自分をなくすことと同じことだ。

そして何より素晴らしかった、ラストシーン

ここから物語は、終盤へ。キャロルは自分自身の生き方を選び取った。そしてテレーズのところへ。断られることが怖い、というためらいをみせながらも、テレーズに一緒に暮らしたいという思いを伝えるキャロル。でもキャロルは簡単にはうんといわない。

もうほんとに、嫌なドキドキを味わった。このままテレーズとキャロルは、別れて生きることになるのか…?

でも、もう本当に素晴らしいとしか言いようがない、ラストシーン。テレーズは異性愛者ばかりの、仲間とのパーティを抜け出してとうとうキャロルが会食をしているレストランへたどり着く。そしてゆっくりと近づくとキャロルはテレーズに気が付き、少し驚き、そして、なんとも言えない愛情のこもった瞳でゆっくりとほほ笑むのだ。あの表情。胸が詰まった。

もう、本当に、よかった。きっとここから、二人は一緒に生きていくんだろう。
本当に本当に、よかった。

だって、ビアン映画って大体が悲劇かエロに走るのだもの。ちゃんと、惹かれあう二人が幸せに、一緒に生きていくっていう結末になるものが少ないのだもの。いろんな障害はあったけど、ハッピーエンドで終わってくれて、本当に本当によかった。

異性愛じゃなくたって、愛する人と一緒に生きていきたいのは、当然のことだ。
でも、それができない時代背景だった。
現代だって、決して、わたしたち(同性愛者、両性愛者)が生きやすい時代じゃない。
そんな中で、自分を偽らないというキャロルがした決断は、本当に尊い。
わたしだって、「親のために結婚、出産はしたほうがいいのでは」と思ったことは何度もある。でも、それじゃ自分が死んでしまう。
わたしも、こんな風に生きていいんだって、改めて思った。

…うーん、それにしても、なんでたった一つの映画でこんなに救われた気持ちになるのか、前向きになれるのか、わからん。私たちには、あまりにもロールモデルが少ないっていうことなのかな。すとんと落ちないけど。
創作物とマイノリティの心との関係はもう少し考えてみたいんだけど、とにかく、こういう、ビアンが幸せになる映画、もっともっと増えてほしいなって切実に思う。
なんていうか、うまくいえないけど、支えになるように思うんだよね。
前向きに、自分を肯定しながら生きていく支えに。

 

 

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