七転び八起き

観劇記録、ハロプロのこと。たまにLGBTとお仕事の話も。

【映画DVD】鑑定士と顔のない依頼人感想(前半ネタバレなし、後半ネタバレあり)

「鮮やかに騙される」という煽り文句そのもの!最高に面白く、美しく、切ないミステリ、『鑑定士と顔のない依頼人』を見ました

「鑑定士と顔のない依頼人」観ました。すっごくすっごくよかったです!本当にお勧めできる映画なので、前半はネタバレなし、後半はネタバレありの感想を書いていきたいと思います。

鑑定士と顔のない依頼人 [DVD]

鑑定士と顔のない依頼人 [DVD]

 

「パイレーツ・オブ・カリビアン」のバルボッサ役、ジェフリー・ラッシュが主演のこの映画ですが、今回のジェフリー・ラッシュは有名でストイックな鑑定士、ヴァージル役。ヴァージルは見た目は紳士なんですが、ちょっと嫌味で潔癖症で女性が苦手。

ヴァージルは、ある女性から両親の残したヴィラ(上流階級のカントリーハウスのことをヴィラというらしい)丸ごとの鑑定を依頼されます。でもその女性は、電話で話すばかりで絶対に姿を現さないのです。そういう失礼な人大嫌いなヴァージルは何度も直接会って話さないと契約はできないと言うのですが、毎回その依頼人は「事故にあった」とか「熱が出た」とか「車を盗まれた」とか言ってなんとか直接会わないで済まそうとして…。

本作は、そんな「顔のない依頼人」とヴァージルの関係性を中心に展開していきます。

 

よかったところ①わくわくドキドキしっぱなしな展開

このDVDの特典映像で、監督ジュゼッペ・トルナーレは「人をドキドキわくわくさせる天才」と言われていたように記憶しているんですけれど、まさにそんな感じ。「依頼人はなぜ電話でのみ依頼して、顔をあらわさないのか?」という謎は比較的すぐに答えがわかるのですけれど、そのあとも次から次へとドキドキする展開が進んでいきます。

ミステリ的ドキドキだけでなく、恋物語のドキドキ、ヴィラにあった貴重な美術品「オートマタ(機械人形)」にまつわるドキドキ、安定した名声を確立していたかに見えた、ヴァージルの仕事に関するドキドキ…。実は私、はまってるゲーム刀剣乱舞をやりながら映画を観ようと思っていたのですが(とうらぶはあまり集中しなくてもやれるゲームなので…)、つぎつぎに訪れる展開に目が離せず、ずっと見入ってしまいました。

 

よかったところ②映像美

見入ってしまう理由は、じつは映像にもあります。映像が美しく、独特の世界観があるんです。私がとても好きなシーンは、ヴァージルが庭を横切ってヴィラへ向かうシーンなのですけれど、少し荒れた灰色の庭やその向こうに見えるいくつかのビルの向こうに、きれいな青空が見えるのです。それがとても綺麗で大好きです。

ヴィラの中に置かれた家具や美術品、壁に絵画の描かれた素敵なお部屋の様子もいいし、ヴァージルが懇意にしている美術品修復の天才ロバートの工房の感じも素敵。

ネタバレになっちゃうのであんまりはっきりとは言えないのですが、壁の穴を通して人の動きを見せるような映像などなど、どことなくフェティシズムを感じさせるシーンもたくさんあります。

 

よかったところ③どんでん返しとラストシーン

このDVDのパッケージ裏面に書いてある宣伝の文句が「鮮やかに騙される。だが、この物語にはまだ先がある」で、「衝撃のラストを知ると、構図は一変する」なんです。これ、観た今となっては「まさに!!」という感じ。本当にネタバレぜったい厳禁の映画なので言えないんですけれど、大きなどんでん返しがきます。こういう映画だと知らずにみたので本当にびっくりしちゃいました。

二回目見ると、いろんなところに伏線が仕込んあであったことに気づかされます。本当にすごい。二回見て、緻密に編み上げられた世界観と計算された映像にまたびっくりしてしまいました。見た後、もう一回見たくなること間違いなしです。

それに、もうこれもほんとうに言いたいけれどネタバレなので言えないんですが、そのどんでん返しがあるおかげでラストシーンの味わいが本当に複雑で、きれいで、心に残るんですよね。ずっとこの物語と、物語の登場人物のことを考えて悶々としてしまいます。登場人物も、数が少ないかわりにひとりひとりの人間性が深く描かれていて、みんな憎めなくて素敵なんですよねぇ。あの時どんな気持ちだったのかなとかその後どうしてるのかなとかついつい考えてしまう…。

監督がとあるインタビューで、「わたし自身この映画の結末は非常にポジティブなものだと思っています。愛を信じる人には勝利ですが、愛を信じない人には暗いエンディングに思えることでしょう」と言っているように、ラストシーンは多分見る人によって解釈が違うと思うんですけれど、わたしはハッピーエンドだと思ってます。いや、ハッピーエンドだと信じています。素敵な登場人物たちだから、みんな幸せになってほしいんだ…!本当にハッピーエンドであってほしい…!

 

あまり多くは語れないのが歯がゆいのですが、そんな感じで本当にいい映画なので、ぜひぜひ、見てみてください。あ、字幕版の方が断然いいし、吹き替え版は誤訳では?とおもうシーンもあって魅力半減なので、字幕版がオススメです。

 

 

さて、ここからネタバレ感想に入ります。まだ観てない人は本当に絶対見ないでください。この映画を見る可能性がちょっとでもあるなら、本当に、ネタバレ読まずに見たほうが絶対絶対楽しいんで…!(絶対見るなっていうと見たくなるらしいですけどそういうの狙ってるわけじゃないので悪しからず。気になった方はほんと今すぐTSUTAYAに行ってDVD借りてきてください。お願いします。Amazonでも割引販売されてますよ!!!)

鑑定士と顔のない依頼人 スペシャル・プライス [Blu-ray]

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ネタバレ感想として言いたかったこと

 

ネタバレあり感想として一番言いたかったことは、さっきも書きましたけど、「この映画、ハッピーエンドですよね!!?そうに決まってる!!!」ということです(笑)

ヴァージルが顔のない依頼人クレアと、信頼していた友人であり仕事仲間のロバート、ずっと一緒に組んでいたビリーに実は騙されていて、溜め込んでいた高価な女性の絵画すべてを奪われてしまうの、本当につらかったです…。 だってあんな白髪頭になるくらいの年齢まで童貞で、潔癖症で女嫌いだったのに、それを克服しちゃうほど惚れてたクレアに騙されてたんですよ!?クレアが失踪した時にはいつでも盗めるような状態でオートマタの部品がクレアの部屋に置いてあったのに、あのがめついヴァージルが、見向きもしないでクレアを必死に探していたのに…!そのくらいクレアのこと大好きだったのに…!でも最初から騙されてたなんて!!!つらい…!!!

因果応報ってところは確かにあると思うんです。ビリーを散々利用して私腹を肥やしてたんですもの…。(もうすでに計画が始まってた頃からしか見てないから本当のところはわからないんですが、ビリーはヴァージルに惚れてたのではと思ってみたり。なんとなく執着を感じさせる会話でした…でもヴァージルはビリーを利用してる感満載だった…。もしそうだとしたら、そりゃあビリーは恨みますよね)

でも、 「美術品の贋作に本物が潜むなら、偽りの愛にも真実が」っていうヴァージルの言葉が最後までずっとテーマとしてところどころに出てきて、字幕版の翻訳で、最後すべてを失ったヴァージルに残されたオートマタがロバートの声で「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む。そのとおりだ。会えなくて寂しいよ」 と語るのだから、きっとクレアや、友人のふりをしていたロバートの中にも、本当にヴァージルを思う気持ちがあったと信じたい。クレア自身も、ヴァージルの隠し部屋でずっとこの家にいてほしいって言われた時、「これだけは覚えていて。なにがあってもあなたをずっと愛してる」と言っていたし…。

だから、最後、ナイト&デイでクレアを待つヴァージルのところには、きっとクレアが来ると思うんです…。

 

最後のシーンのわたしなりの見方

最後のシーン、セリフがほとんどなくて、時間軸も混在してて、わかりにくいつくりになってましたけど、基本は、

  • 髭もじゃ→現在のヴァージル
  • 髭がない→過去のヴァージル

ですよね。で、電車とプラハのシーンだけ髭はないけど現在のヴァージルだとわたしは思ってます。

他のネタバレ記事も拝見してきっとそうだ、と思ったんですが、ランバートが介護施設で自失してたヴァージルのところに、郵便を届けてましたよね。あれ、クレアからの手紙だったんじゃないかと思うんです。だから、そのあとのぐるぐる回る機械でリハビリしてるヴァージルは、クレアに会いにプラハに行くために頑張ってて、でも騙されたことを思い出して傷ついているから、悲愴な顔をしていて。でも旅に出られるくらい回復して、髭も剃って身なりを綺麗に整えて、プラハに引っ越し、ナイト&デイに行ってクレアを待つ、と。そういうストーリー…ですよね…?(ちょっと自信ない)いや、きっとそうです。これから二人はプラハで再開して、幸せな生活を送るんです。そうだと信じたい。

 

二回見て気づいたヴァージルへの愛情があらわれてると思われるシーン

単に騙されてただけじゃなくて本当にクレアや友人たちの心(ビリーは除く)にはちゃんと愛情があったのだと思う根拠になるシーンは他にもいくつかあって。

  • ロバートが彫像に隠れてクレアとヴァージルの食事を覗き見るシーン。一回めはロバートがクレアに惚れてる表情に見えていたんですけど、二回目によくよくみてみたら、ロバートが覗き見ている側はヴァージルのいる方なんですよね。あれだけでかい彫像でそっち側からみたら、明らかにクレアの方は見えない。だからあの表情は、ロバートがヴァージルの語る半生を聞いて、ヴァージルのことを人間としてもっと好きになってしまったっていう表情、もしくは、「あっ、こいつまじでクレアに惚れてるわ…!あの堅物が…!」っていう表情に違いないと思うんです。その時、正面で話を聞いていたクレアの「あなたの話し方が好き」っていう時の表情も、それまでは騙すつもりでいたんですけれど彼の話を聞くうちに本当に好きになってしまったという顔に見えました。
  • その直後のシーンで登場するロバートの彼女。もし本当に騙すつもりだったら、わざわざ「彼がクレアって女のことばっかり言うの」って言わないと思うんですよね!良心の咎めたロバートが、彼女に相談して、彼女が「彼がクレアのことばっかり話す」とヴァージルに告げることでロバートやクレアが彼を騙していることに気づかせようとしたんじゃないかと思うんです。
  • クレアが部屋にヴァージルを招き入れた時。すっごいラブラブしてたのに途中でクレアに「チーフ」から電話がかかってきて、「結末を直したいの。もっと明るいエンディングに」ってクレアは言うんですけど、「ええ、お望みなら…」って言って諦めるんです。それで電話をきったあと、急に態度が冷たくなるんですよね。不自然なほどに。これ、電話相手の「チーフ」はビリーで、ヴァージルに情が湧いてきたクレアが「この人からすべてを奪うのはいやだ」って抵抗を示したのに、受け入れられなかったっていうエピソードなんじゃないかと推測しています。
  • クレアが失踪したあたりのエピソード。あの時、ビリーはクレアの失踪で狼狽し、オークションで失態を演じるヴァージルを見ながら演技とは思えない、不審げな顔や失望したような顔をするんですよね。これも推測ですけど、クレア失踪事件はヴァージルを騙していることが嫌になってしまったクレアが本当に逃げ出してしまったってことか、もしくは、ヴァージルの愛情が本物か試すためにロバートとクレアが共謀した失踪事件だったんじゃないかと思うんです。どちらにせよ、ビリーには想定外のアクシデントだったからあんな表情をしたんじゃないかと思うんですよね…。その後ロバートが「隠し部屋は他にはないのか」ってクレアの居場所のヒントになることを電話してくるのもなんか不自然だし…。

 

これらのエピソードから、少なくともクレアとロバートと、ロバートの彼女はヴァージルのことを憎からず思ってたと思うんです。だからきっと、ラストシーンのあと、クレアがヴァージルのもとにやってくると、信じています。

 

最後に

でも、もしクレアが来なかったとしても、ラストシーンのうつくしさには変わりがないとも思います。あんなに嫌味で、潔癖で、人を信じてなかったヴァージルが、クレアという一人の人のことを想って、あの素敵で風変わりな内装のお店でクレアを待つんです。ものすごい成長ですよね…。あのお店の名前が「ナイト&デイ」で、内装のモチーフが時計だというのも象徴的。昼も夜も、時の流れの中で、ヴァージルはクレアを待ち続ける…そんな風に解釈するととても切なくなります。

 

ああ、しかしヴァージルの成長物語として見てもやっぱり素晴らしい作品です。ずっと人を拒絶するようにして生きてきた潔癖症のヴァージルが、クレアのためには必死になるし、クレアに触れるためだったら手袋も捨てるし、最後はクレアに対してだけじゃなくて、レストランで出された紅茶を飲むときにも手袋しなくて済んでいるんですよ…。泣ける…。

そしてオートマタが、またいい味だしてるんですよね。ヴァージルがどんどん人間らしく成長していくのを象徴するように、部品が見つかって人間の姿に近づいていくという…。あの繊細な造形もすごく素敵です。

 

でも、ひとつだけ嫌だったのは吹き替え版。オートマタが喋るセリフがイヤーな感じに変わっていて。オートマタが「あなたは過去の遺物」とか言うんですよ。字幕版で確かめたんですけど、もともとのセリフにもそんなのどこにも入ってなくて…。英語得意じゃないので間違ってたら申し訳ないんですけれど…。字幕版の翻訳は正確だと思うんです。吹き替え版はそのほかにもところどころ違和感のある翻訳になっていて、吹き替え版を見てるといい映画感が半減するんです。字幕版があまりにもよかっただけに、残念でした。

 

さて。まとまらないし長い感想でしたが、映画をすでにご覧になった方が共感するところがあったらいいなあと、海に手紙の入った瓶を投げ込むような気持ちで、思います。いい映画でしたね。きっとわたしの好きな映画トップテンにずっと残り続けるだろうと思う、名作でした。