七転び八起き

観劇記録、ハロプロのこと。たまにLGBTとお仕事の話も。

同性パートナーシップ証明書のこと

同性パートナーシップ証明の本を読みました

これ、読みました。 

同性パートナーシップ証明、はじまりました。 渋谷区・世田谷区の成立物語と手続きの方法

同性パートナーシップ証明、はじまりました。 渋谷区・世田谷区の成立物語と手続きの方法

 

わたしは結婚に夢も希望も憧れも持っていない人間なのですが、この本を読んで、本当に実利の面から、やっぱり同性が結婚できないことって不平等なことなんだなと実感しました。そして、同性パートナーシップ制度ができたことは、わたしたちがもっと生きやすい社会をつくるために、ものすごく大きな第一歩だったけれど、やっぱり同性でも法律婚ができるようになってほしい、と心から思いました。(感情的な面では、いろいろと思うところがあって同性婚全面賛成!万歳!結婚したい!とは言い切れないのですが、実利の面からだけ考えれば心底そう思います。感情的な面の話はまた別の機会に書きます)

そして、当事者であっても、ニュースを軽くみていた程度できちんと考えられていなかったことが恥ずかしくなりました。この本を読んで、本当に良かった。もしかしたら、わたしみたいな当事者がたくさんいるのかも。目の前の生活に忙しくて、気にはなってても本をゆっくり読めていなかったり、まだパートナーと二人で生きていくことまでは現実味を持って考えられていない人。そういう人に、ぜひ読んでみてほしいと思いました。

 

そもそも、婚姻という制度がないということは、どういうことか

わたしがこの本を読んで衝撃を受けたのは、そもそも、結婚するってどういうことで、それがないってことはどういうことなのかっていうことを改めて教えられたからです。

普通に結婚すると発生する権利・義務としてこの本に書かれていたのはこんな内容です。

  • 入院手続き、手術の同意
  • 財産分与
  • 扶養
  • 家族割
  • 保険の受取人
  • 不動産の入居
  • 不動産の購入(ローン)
  • 配偶者ビザ
  • 相続
  • お墓

 

同性パートナーには、これがないんです。字面だけで見るとイメージつきにくいかもしれませんが、たとえば、病気をした時、診察室に入れてもらえなかったり、男女カップルと変わらない関係性を育んでいてもパートナーの実家の家族に手術や入院の同意書を書いてもらわなくてはならなかったりします。せっかく二人で貯めたお金も、たとえば片方の名義の銀行口座に貯金をしていて、その人が死んでしまったら、相続の権利はないので実家の家族に取られてしまったりします。共同名義でない家に住んでいたら、出ていかなければならない場合もあります。

だから同性婚ができない今の日本では、常に不安を抱えて生きていかなければいけません。男女カップルと比べて、お互いがもし万が一病気になったら、死んだら、ということを常に考えながら備えていかなければいけません。

 

男女カップルだったら当たり前すぎて、ことが起こるまでは、考えることもないかもしれませんね。わたしだって、当事者であるくせに、この本を読むまでちゃんとイメージできてなかったくらいですもの。例えば、男女カップルで、「二人で家を買いたいから結婚しよう」とか「この人に財産を残したいから結婚しよう」とか「この人が病気になったときに一緒に病室で話を聞けないのは困るから結婚しよう」って普通思わないですよね。生活をともにしたいって思える人と出会って、それなりの年齢になったら、とりあえず結婚。そうすると、あとからこういう特典がついてきて、人生の大事なイベントの時にいつのまにか助けられてる、という。それって、すごく羨ましいなと思います。

まあ、逆に言うと結婚について深く考える機会が少ないだけに、結婚して家を買って、でも別れることになって共同名義のローンをどうするかで慌てたとか、家族の貯金をどう分けるのかで争ったとか、そういうことも起こるのかもしれませんが。

 

それでも、別にそれらの権利や義務が公的にはなくてもなんとかなるんじゃないかと思う方もいるでしょう。(実際に言われたこともあります)

「お医者さんだって悪人じゃないし、頼んだらなんとかなるんじゃないの?」「ローンを二人で組めない?なら賃貸に住めば?」「歳とったら女同士だと家を借りにくくなる?カミングアウトせずに、『結婚とかもうないと思うんで、友達同士で一緒に住むことにしたんです』っていって押し切れば大丈夫だよ!」「家族割がない?二人とも仕事してるんだからいいじゃん、そのくらい払えば!子供いるわけじゃないんだしさ」

みなさんは、どう思いますか?

わたしは、おかしいと思います。なぜ、男女カップルと同じように助け合っていきているのに、同性同士だからって、人生の選択肢を制限されたり、交渉する心理的・時間的な負担を受け入れざるを得なかったり、経済的な不利益を我慢しなければならないんでしょうか。これを、不平等というんだ、とこの本を読んで改めて思いました。

 

できることできないこと

そこで、同性パートナーシップ証明です。昨年、渋谷区、世田谷区が相次いで同性パートナーシップ証明を発行することができるようになりました。

パートナーシップ証明というのは、お役所が、この二人はパートナーシップの関係にあると認め、証明書を発行するということ。なので、その区内の会社や病院では、少しだけ不便が解消される可能性があります。

図書館から借りてきた本で、いま手元にないので、メモしている限りで恐縮ですが、なにができるのか、渋谷区と世田谷区の違いはどんなところにあるのかをご紹介します。

 

渋谷区
  • 条例である(区内の事業者にパートナーシップ証明書を持つ人への対応の義務が生じる)
  • 証明書発行の条件は、20歳以上であること、渋谷区に住んでいて住民登録を行なっていること、配偶者がいないこと、他にパートナーシップがないこと、近親者でないこと、任意後見に係る公正証書と合意契約に係る公正証書を作っていること。

 

世田谷区
  • 条例ではなく「要綱」(対応マニュアルのようなもの)
  • 証明書発行の条件は、20歳以上であること、世田谷区内在住であること。(公正証書等は不要)
  • 発行してもらうには事前予約が必要
  • その代わり、区内の事業者に対する義務は発生しない

 

つまり、渋谷区でパートナーシップ証明書を発行してもらえば、病院や携帯ショップや不動産屋やお寺や葬儀屋さんなどで、同性パートナーとして扱ってもらえる可能性が高まるということらしいです。世田谷区では、パートナーであることを証明する書類はもらえますし、それを提示すれば配慮してもらえる可能性はありますが、企業に義務が課されるわけではないので渋谷区よりは対応してもらいにくかったりもするかもしれません。その分、渋谷区では証明書を発行してもらうための要件である、公正証書を作る手間とお金がかかります。(数万円くらいです)

 

わたしが詳しくパートナーシップ制度のことを知って感じたのは大きく二つ。

一つ目は、パートナーシップ証明書は結婚と同等とはいいがたいこと。渋谷区や世田谷区の外に出た瞬間に、パートナーシップ証明書は紙切れ同然になります。勤めている会社が区外にあったり、旅行先で思わぬ事故にあって病院に搬送されたりした場合など、相変わらず不都合を被るシーンは多くあるでしょう。また、婚姻と違って、扶養に関する制度の恩恵は受けられません。たとえばパートナーの一人が病気などで働けなくなった時、健康保険などの面で不利益を被る場面も出てくるでしょう。(扶養に関しては勉強不足…ほかにもデメリットがいくつかあると思います)さらに、結婚と違ってお金も手間もかかるということも、重要なポイントだと思います。

もう一つは、それでも、地方自治体がこういう制度を作ったことの意義です。わたしは昔、公共系のお客様を相手にする仕事をしていたこともあったのですが、やっぱりお役所は横並び意識が強いなと感じる時があって。なにか新しいことをするとき、自分が第一号になろうとする地方自治体はまれです。でも、逆に言えば、ある自治体が導入したら一気に変わるっていうこともあるんです。その仕事をしていた時には、「隣の市がやってるからうちもやらなきゃと思って」「同じ仕組みでやるので方法を教えてください」と言われることもしばしばありました。だから、渋谷区と世田谷区で同性パートナーシップ証明書を発行するようになったことは、本当に大きな一歩だと思います。

 

やっぱり法律婚が欲しい

それでもわたしは、条例や要綱のレベルで自治体ごとに対応していくのではなく、やっぱり国の制度として同性のパートナーシップが結婚と同等に扱われてほしいと思います。もちろん、同性パートナーシップ証明書を発行する自治体が増えることはいいことですし、ぜひそうしてほしいんですけどね。

理由はこうです。

  • 同性のパートナーシップを認める地域と認めない地域があることで、同性愛者の生き方の選択肢が狭くなる。
  • 法律婚と違って、同性パートナーシップ証明書の発行は法的根拠がない。だから渋谷区のパートナーシップ証明書の発行条件のように公正証書などで補わなければならない。その分同性パートナーには法律婚ができる男女より経済的負担がかかる。
  • 法律で定められているということと、地方自治体の条例や要綱として定められているのでは、与える影響が全く異なるから。国が決めたことであれば「うちの自治体には同性愛者なんていないから対応しなくていい」(ほんとは見えてないだけ)とか、「趣味の話なんだから許されてる場所でこっそりやればいいじゃん」とか「結婚してるカップルとは違って正式な関係じゃないでしょ。男女でいうなら夫婦じゃなくて恋人関係ってことだよね」っていう誤った認識を覆す力になると思うんです。

 

これは余談ですけど、わたしは仕事柄、国が法律にしたことがらであっても「義務じゃなくて努力義務なんだから対応しなくてもいいでしょ」とか「形だけやっとけばいいでしょ」って言う会社をたくさん見てきましたので、法律で決まったって変わろうとしない人たちやなんとか抜け道を探そうとする人たちがいるのだから、ただでさえ不利な状況にある同性愛者のために法律が作られることは、少しでも状況を変えていくために必要なんじゃないかなあと思っています。

 

長くなりましたし上手くまとまってる気もしないですが、以上です。

あーほんと、結婚したい。人生できっと起こるもろもろの面倒ごとを思うと、結婚をすることでそれがちょっとでも楽になるのなら、ぜひそうしたいなと思います。ただでさえカミングアウトするかしないかとか、人に差別意識をぶつけられて嫌な思いをしないかと神経をすり減らして生活しているんですもの。

同性婚のはなしは、また別の角度でちょこちょこと書いていきたいと思います。