七転び八起き

観劇記録、ハロプロのこと。たまにLGBTとお仕事の話も。

ピカレスクセブン感想(ネタバレあり)

ピカレスクセブン、観てきました。

年始早々、少年社中さんのピカレスクセブンを観てきました。キャストもセットも衣装も、少年社中二十周年にふさわしい豪華絢爛さだったと思います。………が、どうしても気になることがいくつかあって、心から楽しめなかった、というのが正直なところです。

 

改めて言いますが、役者さんは本当にとってもよかったです。
主演の宮崎秋人さんの身体能力やネアカさ、顔のあらゆる穴からすべての汁を出し切るくらいの体当たりの演技。鈴木勝吾さんの妖艶さ、殺陣の美しさ、苦悩の演技の巧みさ…。それらをさらに引き立てる演出と衣装とセット。
初めて演技を拝見した相馬さん、細貝さん、丸山さんはそれぞれに美しく個性的で、演技も達者。また別の機会に是非、演技を拝見したいものだと思いました。
ネバーランドを観ていた身としては、唐橋さんと鯛ちゃんと井俣さんのかけあいはほろっとくるものがありました。そして、唐橋さんと鯛ちゃんって舞台にいるとそれだけでちょっと嬉しくなっちゃうようなかわいらしさがあるんですよねえ。二人が舞台上に出てくるととても楽しい気持ちになりました。
ジャック役の佃井さんも美しいやらスタイル超絶良いやら殺陣もものすごい上手いやらで観ているのが楽しかったです。
そしていつもの社中さんのメンバーも相変わらず抜群の安定感で。特にファントム役の堀池さんは衣装と動きの美しさがわたしの性癖ドストライク。早くファントム出てこないかなあと思いながら見てしまいました。


でもね、でもどーーーしてもモヤモヤしちゃうんです。今日はそのモヤモヤについて書こうと思います。

 

ここで注意していただきたいのですが、ネタバレをもりもりするので、これから観劇される方は見ないでいただきたいなと思います。余計な先入観にもなってしまいますし。
フォロワーさんやこのブログの読者さんには、少年社中さんの舞台が好き!っていう方もたくさんいらっしゃると思います。そして、ピカレスクセブン、とてもよかった~~っていう人も。
そういう方は、ごめんなさい、今回は読まないでください。
ほら、自分が楽しいとか好きと思っているものでも、人の否定的な意見を見ると水を差されるような気持ちになること、あるじゃないですか。そういうふうに、思ってほしくないので。

 

ということで、ここからぶっちゃけたお話をいたします。

 

 

 


一番嫌だったことは女性の描き方

一言で言うと、マクベスとジャックの関係性が不快でした。とっても不愉快。理解できなかったししたくなかった。ここがひっかかってしまったから、最後までピカレスクセブンの世界観に没入して時を過ごせなかったし、終わった後も手放しで良かったと言えませんでした。
実はわたし、これまでは少年社中さんの作品や脚本・演出の毛利さんのこと、結構好きで信頼していたのですよね。(モマは合わなかったけど。)だからこそ、なんとか良い方向に受け取ろうと無意識にしていて、最初は「ちょっと違和感」くらいだったんですが、考えれば考えるほど、ああやっぱ嫌だなあと思ってしまいました。

 

まず、マクベスの言葉が、不愉快きわまりないんですよね。
最初、ジャックちゃんと会ったとき「女」と呼びます。ジャックちゃんという個を認めてませんね。もうここからね、嫌な予感がしたんですよ。そして、
「おまえ、男を知らないのか?」
「俺がお前を女にしてやる」
「おまえも裸になれば(娼婦と)同じ」
「なぜ女であることを拒む」
というクソ発言のオンパレード。
「女はすべて男とセックスしたがっている」「裸になればみんな男のおちんちんに平伏するものだ」「男とセックスしたがらない女なんていないはず」っていう思考が透けてみえる発言ですね。とっても不愉快。

 

そんな発言をしちゃうマクベスは、男として育てられ、「薄汚い女どもへの罰だ」と言って娼婦を殺しまくったジャックちゃんに対して、ドレスを着ているからという理由で、本性は「女」で、心の底では「女」であることを望んでいるという解釈をしています。だからいやがるジャックちゃんをレイプして、でもそれはジャックちゃんの望んでいたことだと言います。さらに「お前は女だ。だが薄汚くはない。お前は美しい」なんてことを言う。ああなんて不愉快なの。
わたしは女ですし女の格好をすることも好きですが、女の子とのセックスが好きです。そんな人を誤って(?)犯してしまったとしたら大変な悲劇ですね。そしてわたしという個人がバイセクシャルだということが少数派だという理由で度外視するとしても(個人的にはそういう考え方は大嫌いですが…)、女性が着飾ることは別に男に愛されたいからだけではありません。自分のために着飾ってるの。女の格好してたらみんな男に抱かれたがってると思ったら大間違いですから。

 

…まあ、不愉快ですが、ここまでは百万歩譲って許すとしましょう。だって「極悪人」設定ですから。レイプくらい屁でもないくらいの意識かもしれません。マクベスの生きてきた時代を考えても、女性に対する認識がそんなもんでも、ままあることでしょう。

 

でもね、驚くべきことに、ジャックちゃんはなぜかそんなマクベスを愛してしまうのです。最終的には、ジャックちゃんはマクベスの孤独を終わらせたいという理由で敵側に回ってジャックを殺そうとし(それが実際にマクベスの望みだった)、「地獄で待ってる」と言って死んでいきます。

男の理想を具現化したような女性像ですよね。無理矢理犯しても、最終的には愛してくれて、だれよりも自分のことを理解してくれる女。
ストーリー上は、ジャックは女性である自分を抑圧していて、だからこそ、マクベスとの関わりを通して抑圧された自分を解放していくっていうストーリーになっています。つじつまは合います。マクベスは誰も気付いてくれなかった本当の望みを叶えてくれたひと、という見方もできなくはない。
でも、レイプされてるんだよ?しかもめちゃくちゃいやがってたんだよ?マクベスは「快楽を感じてどう思った」的な事言ってますが、快楽感じられる????身体の防御反応でそういうことがあるかもしれないけど、だからといってそれで許しちゃうの?????って思います。
だからジャックちゃんの行動原理が最後までぴんとこなくて、全く感情移入できませんでした。
そしてこういう都合のいい女的なキャラクターとそれを犯した男との恋愛関係がなんか「美しい話」っぽく描かれるのがとっても嫌で、残念でした。

 

なんだかんだ、架空のお話だといっても、そのお話を作る人のものの見方や、考え方って反映されるものだと思うんです。そして、その人のものの見方や考え方に基づいて作られた世界が好きで、そこに浸りたいから、その演劇作品を見るんです。わたしは脚本家・演出家を見て演劇作品を選ぶ人間なので。
だから、毛利さんって普段女性のことこんな風に思ってるんだなあって思ってしまって。「女は結局のところ男に抱かれて、愛に生きることが幸せなんだろ」って。「女である自分を抑圧して生きること(=男に愛されないことや男とセックスできないこと)は不幸」だと思ってるんでしょって。
自覚的にはそう思っていないとしたって、そういう考え方が透けて見えてしまう世界に浸ることはわたしにとって不愉快なので、2回目を見たいとはまったく思いませんでした。
わたしはフェミニズムに救われてきた人間です。「男に選ばれない女は価値がない」とか「男に惹かれない女は普通じゃない」とか。そういう呪いから解き放ってくれたから。だからこそ、人の心を描く職業の人が、そういう「一般的な価値観」に苦しめられている人がいるってことに無自覚でいられるって、おめでたいなと思うし、「もうそんな人の描く物は見たくない」って思ってしまいます。これまでの少年社中さんの作品を見て、毛利さんの脚本好きだな~って思っていたからこそ、残念でなりません。


話の粗

さて、話は変わって、ストーリーについても、本音で言うと粗の目立つ話だなあと思いました。そして、人数が無駄に多くてわかりにくいな、と思いました。内容が良かったからではなく、わからなかったところを確認したかったから台本を買いました。
たとえば、そうりだいじんの存在一つとってもそうで。江戸時代に、自衛隊引き連れた総理大臣が来たら、どんなに個々のスキルが優れていたって、一瞬で敵陣を壊滅させられますよね。でも、そうりだいじんはとくに重要人物扱いもされておらず。イエミツ陣営もそんなに人死にが出ないっておかしいと思う…。
主人公のイエミツ本人の成長物語として見れば見られなくもないかな?と思ったりもしたのですが、後から語られるイエミツの思想としては「みんなを笑顔にしたい」であるのに反して、最初のシーンで、最初にイエヤスを呼び出して江戸が火の海になっても悲壮感がとっても薄かったのを思い出して、頭を抱えました。イエヤスが来て大変なことになっちゃったから、対抗できる悪人を呼び出して戦おう、オー!くらいのノリなのですよね。なんかへらへらしてるし。本当に「みんなを笑顔にしたい」と思ってる人がへらへらできる状況じゃないって……。
あとピピの存在もよくわからないですよね。ピピによる黄泉がえりの仕組みは考え出すとあれこれ「こういう場合はどうなんだろう?」っていう突っ込みどころが出てきて面倒くさいので考えるのをやめました。

 

というわけで、思想的に嫌いだ、と思う場面もありつつ、お話としても粗が大きかったことが理由で、わたしはピカレスクセブンをいいと思いませんでした。なんだか、昔好きだったものがそうじゃなくなることって悲しいなぁと思いました。

 

ではまた!